蜜柑のプロジェクトverβ

シホンシュギ、ヒャハー

ガイドブック


■田中研之輔「新宿ストリート・スケートボーディング――都市下位文化の日常性」、吉見俊哉・若林幹夫編『東京スタディーズ』紀伊国屋書店、2005

 街の散策に役立つ情報満載のガイドブックとは、その多くが「見る者」の限定的視点で切り取った「断片」を寄せ集めたものである。それは、街案内という役割に加えて都市全体の立体的な想像や追体験を可能にする。けれども、その利点に惑わされていると、「断片」を切り取る視線そのものがすでに既存の都市イデオロギーに囚われてしまっていることを見落としがちになる。都市ガイドブックが文字通り都市への案内手引書であるならば、都市が内包する矛盾や格差等の諸々の問題にも他の艶やかなアミューズメント情報と同様に開かれているはずだ。にもかかわらず、こうした「都市問題」に開かれたガイドブックをみかけることはほとんどない。そもそも、都市ガイドブックとは、いったい誰のどのような視点で取捨選別した「断片」の寄せ集めから編まれているのだろうあか。われわれは、都市ガイドブックの製作・編集の根幹に関わる作業に絶えず反省的に向き合う必要がある。(p.113)