蜜柑のプロジェクトverβ

シホンシュギ、ヒャハー

山之内(1988)

山之内靖「戦時動員体制の比較史的考察―今日の日本を理解するために―」『世界』1988、4


【問い】・第二次世界大戦期における動員体制が日本社会に及ぼした影響はいかなるものであろうか?
    ・それはどう評価されるべきであろうか?


■分析対象としての資本主義と社会主義の関係性⇒高岡(1997)へ

資本主義と社会主義という対立軸を取り上げてもよいだろう。しかし、後者の軸も、大きな区分けからすれば、民主主義対全体主義という基準の枠内にあったといってよい。というもの問題は、資本主義と社会主義のいずれが民主主義のより高い可能性を保証するか、という点をめぐって争われていたからである。p97

民主主義(ニューディール)/全体主義(ファシズム)
弁証法?的見方


ファシズム→柔軟な生産体制の登場

私が本稿において戦時動員体制の問題を取り上げたのは、ラッシュ=ユーリ(ママ)やピオーリ=セーブルによって高く評価されている柔軟な生産体制が、かつてのファシズムの体験をもった諸社会において先駆的に登場してきたという点に、なお、こだわり続けたかったからである。…我々は、今や最先端をゆくとして世界の注目を浴び始めていた日本の産業組織が、戦時動員体制期において横断的労働組合の徹底的弾圧という抑圧的歴史を持ったことを、また、そうした抑圧的歴史を経たが故に、早熟的に会社組合的形態を発展させたという事実を、忘れることはできない。pp.98-99

――ラッシュ=ユーリ、ピオーリ=セーブルらの構図
ニューディール型のアメリカの停滞、西ドイツ・イタリー・日本というかつてのファシズム諸国が進歩の側に立つ。←かなり時代的制約を受けている。今は違うのでは?
 →ニューディール型の社会体制を世界史の進歩の側におく、という戦後歴史学の基本前提はすでに過去のもの98
 ――大量生産体制かた柔軟な生産体制へ、組織資本主義から脱組織資本主義へ、中央集権から地方分権へ、集権的労働運動から新しい社会運動へ

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■国家の役割の変化

我々は、一見、国家の後退と見えるこの事態のなかに、国家の果たす役割の変化が示されていることを言いかえれば、国家が統制機能において新しい課題を担う地位に就いたということを。見届けねばなるまい。…先進産業社会の国家装置は、世界資本主義システムの安定的成長を支える下位体系をして機能するようになったのである。p100

戦時動員体制は、あるいはニューディールという型をとり、あるいはファシズムという姿をとりながら、先進資本主義諸国において、資本が社会的諸モーメントを全包括的に掌握するプロセスであった。p100