蜜柑のプロジェクトverβ

シホンシュギ、ヒャハー

山之内(1996)

山之内靖、1996、「戦後半世紀の社会科学と歴史認識」『歴史学研究』


石田、丸山、大塚ら戦後的な社会科学への考察。


大河内一男の戦時動員体制論

昭和研究会の中心メンバーとして活躍した大河内一男によれば、戦時動員体制は非常時の例外的体制と捉えられるべきものではない。後にふれるように、戦時動員体制は旧来からの構造が根本から再編される画時代的な転換期であった。私のこの論点は、戦時期のなかに戦後改革とその後の経済成長に連なる側面を検出するものなのであるが、だからといって戦時期を美化しようとするものではない。そうではなくて、戦後改革とその後の経済成長が実は戦時期の総動員体制によって発動されたということ、このことを明らかにすることによって、戦後の時代を戦時期に始まるシステム統合の完成形態として把握しなおそうとする提言なのである。p33

――戦時と戦後の継続性
…何度となく強調される点


■総動員による制度的刻印

二つの世界大戦とそこにおける総動員体制は、資本主義社会にたいして不可逆的な構造変化をもたらすこととなった。この構造変化により、階級対立の非妥協的的先鋭化に向かっていた社会体制は大きく変質させられ、階級対立や階層間格差は制度化されて社会システム内部の利害調整機構へと吸収されていった。かくして、社会体制の正当的原理からは排除されており、それゆえに社会体制を外側から脅かす勢力として立ち現れていた諸グループも、社会システムのうちへと内部化され、社会内の機構的役割を担う存在へと変質していった。労働運動も農民運動も、あるいは女性やエスニック・グループの抗議行動も総力戦体制のもとでの強制的画一化を介して、機能的役割を遂行する社会的下位体系へと変質していった。ここで付け加えておけば、ロシア革命によって成立したソヴィエト連邦も、戦時動員体制の所産として理解しうるところが大きいと言うべきであろう。p34

――階級・階層などの対立点を内部化する?