蜜柑のプロジェクトverβ

シホンシュギ、ヒャハー

『情報環境論集』2007

[初出:『中央公論』2003.6]

■選択的な主体性とインターネットが帯びる二側面の関係

 私たちはフルタイムには人間ではいられない。ひとは、特定の関心領域においては人間的な主体として行動するが、それ以外の多くの場合では、動物的な消費者として既存の選択肢にたやすく従ってしまう。そして、ひとが「主体になる」領域は各人で異なる。
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 かわりに私たちが出発点とすべきなのは、内なる動物性を克服し、トータルな人間へと上昇する弁証法的な人間像ではなく、怠惰で動物的な消費生活のなかにパートタイム的に「活動」を点在させる、断片的でポストモダン的な人間像である。私たちの社会は、各人がそれぞれ人間性と動物性を抱え、それらの発揮される領域がばらばらに組み合わさったモザイク状の構造をなしている。だからこそ、インターネットからユビキタスにいたる技術は、だれに対しても、どの領域においても、自由の拡大と管理強化の二側面を帯びてしまう。それが、私たちが迎えつつある情報社会の姿である。pp.156-157